時に犬の命を奪うこともある、恐ろしい犬の感染症。ですが、ワクチンで予防できる場合が多く、年1回程度の予防接種が推奨されています。
なんとなく、獣医師さん任せにしてしまいそうになる犬のワクチン接種。どんな感染症から愛犬を守るために行っているか、知っていますか?
今回は、ワクチンを接種することで予防できる、危険な犬の感染症について詳しく紹介します。
中には人にも感染する怖い病気もあるので、混合ワクチンを接種するときの参考にして頂ければと思います!
予防接種で防止できる犬の病気
接種は義務!狂犬病ってどんな病気?
犬の病気として最も知られているのが「狂犬病」です。狂「犬」病という名称ですが、犬だけでなく人間や、猫やキツネ、コウモリ、馬、アライグマなどの哺乳類にも感染します。
日本国内では1957年以降、発症例は報告されていませんが、現在でも世界のあちこちに存在している、人間も感染の対象になる<人畜共通感染症>の一つなんです。
狂犬病は、感染した動物に噛まれることで感染し、致死率はほぼ100%という恐ろしい病気。日本では狂犬病予防法により、年1回の飼い犬への予防接種が義務付けられています。
犬の混合ワクチンは任意!
接種が義務付けられている狂犬病予防接種と異なり、飼い主さんの判断によって接種の有無を決めることが出来るのが、「混合ワクチン」と呼ばれる予防接種です。「5種混合」や「6種混合」などの「〇種」の数字によって予防できる感染症の数が決まっており、2016年現在では11種類の感染症についてワクチンで予防できるとされています。
5種や9種といった括りでワクチン接種されることがほとんどで、個別に「この病気だけ!」と接種されることはあまりありません。もちろん、希望すれば単体でワクチンを接種することは出来ますので、かかりつけの病院に相談してみましょう。
※混合ワクチンの種類や費用などについて、こちらの記事にまとめました。
混合ワクチンで予防できる病気
ジステンパーウイルスやパルボウイルス感染症は子犬の死亡原因になりやすいため、最優先で打たれるワクチンです。これを土台にして、俗にいう「犬かぜ」や「ケンネルコフ」などの感染力の高い病気のワクチンを加えたり、更に暖かい地域で多くみられる感染症のワクチンを加えたり、と状況に応じて種類が上乗せされていくイメージです。
[右にいくほど、予防できる感染症の数が上乗せされていきます。]
では、こういった感染症がなぜ犬や人にとって危険とされているのか。具体的にどのような特徴があるのか、順番にお話していきますね。
ジステンパーウイルス感染症
[症状]
呼吸器症状(咳やくしゃみ)、消化器症状(下痢や粘血便)
発熱、神経障害、痙攣、全身麻痺などを起こし、致死率が非常に高い
呼吸器症状(咳やくしゃみ)、消化器症状(下痢や粘血便)
発熱、神経障害、痙攣、全身麻痺などを起こし、致死率が非常に高い
ジステンパーウイルスは子犬の感染率と死亡率が最も高く、とても恐ろしい感染症です。厄介なことに、感染した犬の鼻水や唾液、尿からも感染します。(接触感染や飛沫感染する)
風邪と似たような症状が見られますが、特有の神経症状があるのが特徴です。
ですが、その神経症状が出始めると死亡率が上がり、回復しても後遺症が残ることがあります。
パルボウイルス感染症
[症状]
激しい下痢や嘔吐、トマトジュースのような血便、脱水症状
突然死を引き起こすこともあり、致死率が高い
激しい下痢や嘔吐、トマトジュースのような血便、脱水症状
突然死を引き起こすこともあり、致死率が高い
ジステンパーウイルスと共に、子犬の死亡原因として多いのがこのパルボウイルス感染症です。
激しい嘔吐や下痢が続くのが特徴で、子犬の場合は体力がすぐに奪われてしまいます。
主な感染経路は、感染した犬の排泄物や吐しゃ物。またウイルスが付着した衣服などからも感染してしまいます。
犬伝染性肝炎
[症状]
嘔吐、発熱、下痢、腹痛、肝性脳症、神経症状など
嘔吐、発熱、下痢、腹痛、肝性脳症、神経症状など
別名、犬アデノウィルス1型感染症と呼ばれます。
犬アデノウイルス1型の感染によって発症する病気で、感染した犬の排泄物と接触することによって感染します。症状は軽度な物から重度なものまで、様々です。
子犬が感染した場合の死亡率は高く、1~3日で死亡してしまうことも。他の病気との混合感染を起こすことよって死亡率が上がります。
パラインフルエンザウィルス感染症
[症状]
咳、鼻水、扁桃炎など
咳、鼻水、扁桃炎など
感染した犬のくしゃみや咳など飛沫に含まれて空気中を飛び、呼吸器へ感染します。
風邪のような症状を突発的に起こすため、「犬かぜ」と呼ばれることも。
単独感染では死亡率はとても低いのですが、他のウイルスや細菌との混合感染によって重い風邪症状を引き起こします。
犬伝染性喉頭気管炎
[症状]
発熱、くしゃみ、咳、目ヤニ、鼻水など
空咳が長く続くことが多い
発熱、くしゃみ、咳、目ヤニ、鼻水など
空咳が長く続くことが多い
別名、犬アデノウィルス2型感染症。
犬アデノウイルス2型の感染によって発症し、感染した犬との接触だけでなく、咳やくしゃみなどでも飛沫感染します。
この病気単体で感染することはあまりなく、他のウイルスなどの混合感染によって肺炎などが重症化しやすい傾向があります。パラインフルエンザ等と混合感染し、「ケンネルコフ」と診断されることも少なくありません。
ここまで紹介してきたのは、ジステンパーウイルス感染症、パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎、パラインフルエンザウィルス感染症、犬伝染性喉頭気管炎…の5種類です。
この5種類の感染症は犬の命に大きく関係していることから、ワクチン接種が重要視されており、「コア(核)ワクチン」と呼ばれています。
コロナウィルス感染症
[症状]
元気消失、食欲不振、血便、下痢、嘔吐
元気消失、食欲不振、血便、下痢、嘔吐
感染した犬の排泄物や、吐しゃ物が主な感染経路です。
症状はパルボウイルス感染症と似ていますが、発熱することはありません。ですがパルボウイルスとの重複感染によって、パルボウイルスの致死率を上昇させると言われています。
レプトスピラ感染症
[症状]
発熱、食欲不振、嘔吐や下痢、血便、黄疸、痙攣、昏睡など
発熱、食欲不振、嘔吐や下痢、血便、黄疸、痙攣、昏睡など
感染した犬の尿、ネズミ、汚染された土壌などから感染します。
レプトスピラは菌が原因で起こる病気で、人にも感染する人獣共通感染症の一つです。
レプトスピラ病の危険性
上記の混合ワクチンの表で気付いたかも知れませんが、8種~のワクチンはすべて「レプトスピラ」に対するものばかりなんです。レプトスピラは種類が多く、現在はイクテロヘモラジー、カニコーラ、ヘブドマティス、オータムナリス、オーストラリスの5種類の血清型が日本では使用されています。
レプトスピラ菌の大きな特徴として、高温多湿を好み、低温乾燥に弱いというところです。高温多湿な日本の気候はレプトスピラ菌の好む環境であり、特に暖かい地域(四国や沖縄、九州)で多く見られています。
ネズミが運び屋になって媒介するだけでなく、レプトスピラは川や池、田んぼなどの「淡水」を媒介して感染する特徴もあります。そのため、自然の多い地域やアウトドアを好むワンちゃんの場合、感染リスクがぐっと高まってしまうんです。
8種や9種ワクチンの接種は慎重に
レプトスピラの流行する血清型には地域によって特異性があるため、必ずしもすべての血清型に耐性を付ける必要はありません。お住まいが比較的暖かい地域だったり、山などに行くワンちゃんや、室外で飼育しているワンちゃんは注意したい感染症ですが、室内飼育の場合はワクチン不要とされることも多いようです。
また、効果を高めるための物質が含まれているワクチンのため、アレルギー反応が起きやすいことも、レプトスピラワクチンの特徴の一つ。その子の体質なども考慮する必要があります。
危険な感染症から愛犬を守るのは、私たち飼い主の重要な役目。ワンちゃんの普段の生活環境など、どの感染症にかかるリスクが高いのかを考えたうえで、受けるワクチンを決めてもらえればと思います!
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犬山 はる子
パピーウォーカーの経験から犬に関心を持ち、犬の問題行動やストレスケアについての知識を深める。
現在は3頭の犬と暮らし、犬が与える癒しのパワーに日々お世話になっている。
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