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「暑くなってきたし、そろそろトリミングの予約を取らなきゃ…」
「このカット可愛い!うちの子にもしてもらいたいなあ」

夏は愛犬をサマーカットにして過ごす、そんな飼い主さんって多いと思います。
ふっさふっさの毛を纏っている犬達は「毛むくじゃらで暑そう」なイメージ、確かにありますよね。
被毛を短くカットするだけでなく、柴犬風や、まんまるなカットスタイルなど、可愛らしさを求めたサマーカットもとても人気です。

ですが、一部の飼い主さんやトリマーさんの中で問題視されているのが、過度なサマーカットだってご存知でしょうか。短く刈り込んだ被毛のせいで、愛犬の体に深刻なダメージを与えてしまうことがあるんです。

人間からすると「毛を短くすれば犬は涼しい」と思いがちですが、犬のサマーカットは場合によって危険も伴うもの。


今回は、サマーカットがよくないと言われる本当の理由や、犬の被毛の役割について詳しくお話していきたいと思います。
本当に愛犬にサマーカットが必要かどうか、ちょっとだけ一緒に考えてみませんか?

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犬をサマーカットにする効果やメリット

サマーカットと聞くと、「バリカンで丸刈り」のようなイメージする人は少なくありません。

実はこれにはちょっと誤解があって、「サマーカット」の本来の意味は、夏に向けて少し毛を短くしてあげること。バリカンで毛を刈り込まず、毛を少し梳いたりして、風通しが良くなる程度に整えてあげるのも、サマーカットなんです。

ところが、実際にサロンでサマーカットをお願いすると、丸刈りにされてしまう場合がとても多いようです。そういった傾向から、サマーカットは被毛を短く刈り上げると認識されやすいようですね。


愛犬をサマーカットに出す理由で、よく挙げられるのはこんなところです。

なぜ?サマーカットにする理由

  • 長さのある毛が暑そうだから
  • 見た目が可愛いから
  • 夏の熱中症対策に
  • 抜け毛対策、お手入れを楽にしたい
  • ノミやダニを発見しやすい

暑い季節は、サマーカットされたワンちゃんを街でもよく見かけます。
確かに見た目はスッキリして涼しそうですし、可愛いですよね~。


でも、実際にワンちゃん達自身はどう感じているんでしょうか。
私的に、ワンちゃん達の声を想像してみると…

「飼い主さんが喜んでて、私も嬉しいワン!」
「でも、実はちょっとツラいんだワン…」

…あれれ、どういうことなんでしょう?

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犬の被毛の役割を詳しく解説!

愛犬の体を年中覆っている被毛。この長さのあるフワフワの毛には、たくさんの大切な役割があります。

  • 犬の被毛の主な役割
  • 水をはじき、体が濡れることを防ぐ
  • 体の乾燥を防ぐ
  • ノミ・ダニなどの害虫から皮膚を守る
  • 体温を調節し、適温を維持する
  • 紫外線や直射日光から皮膚を保護する

人間と犬では身体のシステムが異なり、人間は汗をかいて体温調節をしますが、犬はほとんど汗をかきません。(犬の汗腺のほとんどは肉球のみ)

発汗以外の手段として、ハアハアと呼吸して体温を調節しているんです。実は扇風機の風も、全身から汗をかかない犬にとっては、涼しく感じないんですよ~。

なんとなく、犬が体温調節がとても苦手なのは伝わったかと思います。


では、どうやって犬は夏の暑さから身を守っているんでしょうか?
実はこれが「極端に短いサマーカットは、犬にとって地獄」とまで言われる、大きな理由なんです。

サマーカットはよくないこと?その理由

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例えば、家にも使われる【断熱材】は、冬には温かく、夏は外気から家を守り、涼しくしてくれます。クーラーボックスや、保冷バッグなどもそうですね。

犬の被毛も、これらと同じく「断熱材の役割」を果たしているんです。

あのフワフワの被毛の隙間に、空気の層をいくつも作っています。
それが断熱材となって、直射日光などの熱が皮膚に届かないようになっているんです。

自分でなかなか体温調節できない犬は、こんな風に被毛を上手に使って、自分の体を守っているんですね。

サマーカットは犬を熱中症にする?

では、この大事な被毛を、サマーカットで丸刈りにしてしまうと…?

暑い外気に皮膚がさらされて、犬の体温はぐんぐん上がってしまいます。
「熱中症対策に!」という親心だったはずが、反対に愛犬を熱中症になりやすい状態にしているのかも知れません。

分かりやすく例えると、犬の被毛は人間にとっての日傘や帽子のようなもの。
どれも、直射日光から身体を守るためのアイテムです。そんな風に考えると、「そりゃ無くなったら暑いよね…」と思えますよね。


また反対に、サマーカット前後でエアコンを同じ室温に設定していたら、愛犬が身体が冷やしてお腹を壊したという話もよくあります。
犬がいかに被毛に頼って体温調節をしているか、よく分かりますね。

危険なトラブルに注意!?

犬の体温調節を狂わせるほかに、こんなトラブルも起こりがちです。

  • 毛が生えてこない、生え方にムラが出来てしまう
  • 毛艶や毛質が変わってしまう

こういった被毛の異変は、全身のカットが必要ない犬種をサマーカットした時に起こりがちなんです。

実はワンちゃんの犬種によって、カットが必要かどうかが決まっています。

カットが必要ない犬種って?

トイプードルをはじめ、トリミング犬種と呼ばれるプードル種、シュナウザー種、テリア種などのワンちゃんは、被毛がずっと伸び続けるため、定期的なカットが必要です。

わたしたちも、髪を切らないと伸び続けますよね。こんな風に、トリミング犬種の子も、カットされない限り永遠に伸び続けてしまうんです。


反対に、被毛の長さがある程度で決まっており、カットが必要ない犬種もいます。
グルーミング犬種と呼ばれる子も含まれるのですが、上記のトリミング種以外は、全身カットで被毛の変化が出やすい傾向がある、と個人的には感じています。

ダックスフンド、パピヨン、チワワ、ポメラニアンなど人気犬種の子たちも、もちろん個体差はありますが、サマーカット後に毛質に変化があったという例をいくつも発見しました。


ふわふわの柔らかい毛だったはずが、バリカンカットで毛質が変わり、ゴワゴワと堅い毛になってしまうなど。飼い主さんのショックは相当なものです。
こういった毛質の変化の厄介なところは、カットしてすぐには分からないこと。数ヶ月くらい経って、伸びてきた被毛の様子を見て、そこでやっと異変に気付くことができるんです。

よくない?バリカンカットに注意

こういったトラブルは、バリカンを使って短くカットする場合によく起こります。

実のところ、バリカンカットでなぜ毛質が変わるのか、詳しい原因はまだ分かっていません。毛の成長を止める、皮膚表面の血管を収縮させるなど、色々と言われていますが…


愛犬をサマーカットするときには、できるだけバリカンを使わず、ハサミでカットしてもらうようにトリマーさんにお願いしてみるのが賢い判断です。
わたしの周りでも、犬種によってバリカンを使うかどうか、きちんと分けたうえで提案しているサロンさんも増えてきました。裏を返せば、それくらい「バリカンで毛質が…」というワンちゃんが増えてしまったからなのかも知れません。

結局、サマーカットはダメなの?

毛の長さをある程度残して、バリカンではなくハサミでカットしてもらうようにすれば、必ずしもサマーカットはよくないことだとは個人的に思っていません。

また、私がいつもお世話になっているサロンのトリマーさん【A山さん(仮)】によると…
やはりこの季節は、サマーカットをオーダーする飼い主さんが激増するとのこと。


A山さんのサロンでは、飼い主さんがサマーカットをオーダーした時はまず説明をするそうです。

  • 体全体の被毛を刈り込むことの危険性やデメリット
  • バリカンカットによる被毛の変化
  • ある程度毛の長さを残して、ハサミを使ってカットする提案

などなど、この記事で取り上げたことばかりです。

サマーカットの危険性を考えた事がない方が大半なので、大抵の飼い主さんは、このA山さんの説明で納得してくれるのだとか。

「夏の間は売上が倍増するから、断れないサロンも多いんでしょうね」と、A山さんは苦笑していました。

夏は被毛の長さに気を付けて!

一説によると「犬の被毛が正しく断熱材として機能する長さは、2cmは最低でも必要」という説もあるそうです。

サマーカットを想像すると、2cmはちょっと長いかも知れません。
ただ、暑さから愛犬が体を守るために必要な被毛。それを考慮してちょっと長めのサマーカットにしてみてはいかがでしょうか。

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犬山 はる子

犬山 はる子

パピーウォーカーの経験から犬に関心を持ち、犬の問題行動やストレスケアについての知識を深める。 現在は3頭の犬と暮らし、犬が与える癒しのパワーに日々お世話になっている。