dog253 犬の声帯にメスを入れる「声帯除去手術」

賛否両論あるこの行為ですが、そもそも声帯手術は、具体的にどんな処置なのでしょうか。手術によって、愛犬にどんな影響があり、現実問題として手術費用はいくらくらいかかるのかなど。

受けるかどうかはまず置いておいて、「声帯手術ってなんなの?」という部分について、お話していきたいと思います。

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声帯手術の費用や手術方法

声帯手術(声帯除去手術)とは言っても、声帯そのものを完全に取り除くわけではありません。声帯にある声帯ひだの一部分を切り取ることで、犬が吠える声量を小さくします。

手術の方法は、主にこの2つ。
どちらも、全身麻酔を使って行われます。

  • 口腔アプローチ法
  • 犬の口を開けさせ、そこから喉の奥の声帯を切除する方法
    パンチやはさみ、レーザーなどを使用する

  • 喉頭切開法
  • 喉仏の部分を切開して、そこから声帯を切除する方法
    切開が必要な分、口腔アプローチ法よりも負担が大きい

手術費用は病院によって事なり、3万円~15万円とかなり差があります。

声帯手術は、動物愛護の面から批判の的になることが多く、手術実績などを率先して公開しない動物病院がほとんどです。
信頼できる動物病院に直接尋ねるなどして、手術を行ってくれるかどうか、実際の費用はいくらくらいなのか確認してみて下さいね。

吠えないようにする手術ではない

犬が声帯手術を受けると、空気を吐き出す「ヒューヒュー」という音や、スカスカとした掠れ声が出るようになります。

手術をしたからといって吠えないわけではなく、「吠える行為」そのものは無くなりません。最初は「ハウハウ」「カフカフ」と空気音しか出なくても、吠え続ける子の場合、声帯が鍛えられて再度声が出るようになることもあります。


声帯除去後にその子がどんな声になるかは、実際に切ってみなければ分かりません。
遠くに響くような甲高い声ではなくなりますが、しゃがれた声だったり、ハスキーな声になることもよくあるようです。



このプードルのアンちゃんは、保護された時には、既に声帯が切られていたそうです。
フキュッフキュッ、と空気が漏れるような声を発しています。

どんな経緯で声を失ったのかは不明ですが、きちんとした手術で処置されていたことを願います…。

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声帯手術は犬の虐待になる?

よく「声帯を切るなんて虐待だ」という声を聞きます。
全てを否定するわけではありませんが、これについて、私は「声帯手術そのものは虐待ではない」と考えています。


上記で紹介したプードルのアンちゃんがそうだったかは分かりませんが、心無いブリーダーによって「声帯を潰された」犬は、とてもたくさん存在します。針金や割り箸で強引に喉を傷付けて、吠えないように声帯を「つぶす」んです。
これは、言うまでもなく虐待ですよね。こんな事を平気でやっている人が居ると思うと、ぞっとします…。

また、正しいしつけやトレーニングを行わないまま「うるさいから声帯を切ります」と、安直に手術を受けさせようとする飼い主さん。
これも「しつけをしない」という、犬にとっての虐待です。

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こういった明らかな虐待とは異なり、愛犬との暮らしを真剣に考えた上で、最後の手段として声帯手術に踏み切る飼い主さんもいます。

もちろん、しつけ等の問題行動の改善を、全力で行ったにもかかわらず、です。
また、ペットの高齢化が進んでいる昨今では、認知症などの病気によって強い吠えが表れる子もいます。この場合、若いワンちゃんとは違って、問題行動の再しつけが難しい状態です。

こんな場合には、愛犬を手放す以外の「最後の手段」として、声帯手術を提案します。


というのも、「うるさい吠えをやめないので、保健所に連れて行った」という最悪の行動を、平気でやってしまう心無い飼い主さんも、未だにいるんです。
「声帯を切るなんてかわいそうだから、保健所に…」という声もあると聞いて、唖然としました。

保健所は、養護施設ではありません。
連れて行かれた子に待っているのは、殺処分。その飼い主さんたちは、それを分かっていたんでしょうか。
その子を飼うと決めたのに、人の勝手な都合で保健所に連れて行くほうが、よっぽど虐待行為であると感じます。


自然な姿ではないけれど、声を失うことで、その子が最期まで飼い主さんの元で暮らせるなら…。
吠えるから保健所で殺処分、ではなく、代わりに声帯手術という選択も、最後の手段として残しておいてもらいたいなと個人的には思っています。

声帯手術後の後遺症

手術後は、傷口からしばらく出血すると思っておきましょう。
傷口がふさがる前に吠える行動が続くと、傷口が炎症を起こすことも有り得ます。

手術跡が炎症を起こすと、気管などに影響が出ることがあるようです。気管が狭くなり、呼吸がし辛くなることから、激しい運動を控えなくてはいけなくなる場合もあります。


また上記でもお話しましたが、声が出なくても吠える行動を続けることで、声が復活することも少なくないようです。
声が復活するとは言っても、手術前の声とは異なり、かすれたハスキーな鳴き声です。人によっては、それを不快に感じる可能性も…。


声が充分出ないために、何かを伝えようとしても気付かれない、伝わらない、ということに強くストレスを感じる子もいるようです。
声を取り上げてしまう分、愛犬のことをよく観察して、訴えを敏感に感じ取るようにしてあげて下さいね。

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犬山 はる子

犬山 はる子

パピーウォーカーの経験から犬に関心を持ち、犬の問題行動やストレスケアについての知識を深める。 現在は3頭の犬と暮らし、犬が与える癒しのパワーに日々お世話になっている。