犬と暮らしていると、動物虐待のニュースには耳を防ぎたくなる。
憤りを感じる飼い主さんがほとんどだと思うし、もちろん、私もその中の一人だ。
『うちの愛犬は、大切に大切に可愛がっているから大丈夫』
『嫌がることは絶対にさせないし、愛犬の気持ちが何より一番なの』
そうやって愛情を注いでいることが、実は「虐待」と紙一重になっているとしたら…?
一般的に問題視されている虐待とは異なり、犬を愛する人ほど陥りやすい隠れ虐待。今回は、この「優しい虐待」といわれるテーマについて詳しくまとめました。
犬の虐待はどこからどこまで?
虐待、と聞くと、ほとんどの人が暴力的なものをイメージすると思う。動物に限定して虐待の種類をまとめると、主なものはこの3つ。
- 身体的虐待
- 心理的虐待
- ネグレクト(世話の放棄)
殴る蹴るなどの暴力行為や、必要以上に怒鳴りつけたりするなど、犬が「苦痛」「不快」と感じることを人間が意図的に行うことは、当然ながら動物虐待になる。
また、ご飯を与えない、トイレの始末をしない、病気になっても病院へ連れて行かない、など、犬の飼育義務を果たしていない状態は「ネグレクト」とされ、これも動物虐待にあたる。
こういった種類の虐待を行う人は、どう考えても動物が好きではないはず。
犬が嫌いだから、こういったことを平気で出来るのだと思う。
しかし近年は、新たな4つめの虐待が問題となり始めている。
それが犬を愛するがあまりに起こる、「優しい虐待」と呼ばれるものだ。
犬の優しい虐待とは?
「優しい虐待」とは、人間の子育てでも注目されつつある社会現象のひとつ。→参考「優しい虐待が子供を壊す。原因はしつけを頑張る親にあった?」
人間の「優しい虐待」とは意味や内容は異なるが、ペット飼育でも、この問題が徐々に注目され始めている。では具体的に、どんな行動が「優しい虐待」なるのだろうか?
最低限のしつけをしない
可愛いあまりに犬を甘やかして、愛犬のしつけをしない飼い主さんもいる。手が付けられない状態になってから、もう面倒を見られない!と手放すパターンは少なくないのだとか。
- マテ、オイデ、の指示しつけができない
- 激しい無駄吠えをやめさせない
- 犬自身が自分がリーダーだと思っている
- 強い攻撃性や噛み癖があり、それを放置している
- トイレを覚えていない
飼い主からすると、きちんと食事を与えているし、散歩にも連れていっている。だから虐待なはずがない!、そう思っているはず。
人と一緒に暮らしていくために、人間社会のルールを理解させることは最低限必要なこと。それを「しつけ=かわいそう」という人間のエゴで怠るのは、結果的に虐待しているのと同じだと思う。
甘やかされて育った犬はどうなる?
もちろん、甘やかすことそのものは悪ではない。可愛くて、大切な我が子のような愛犬だから、多少は甘くしたくなるのが当然だ。
でも、それが行き過ぎた状態になると…
愛犬に一体どんな未来が待っているか、考えてみて欲しい。
- 飼い主が犬を甘やかし、叱らない
- リーダーとしてのストレスを感じる
- 人との暮らしに適応できなくなる
- 犬を持て余し、保健所へ
この時点で、ストレスによって体調を崩す犬も少なくない。
日々の散歩にも苦労し、気に入らなければ平気で飼い主に威嚇してくる愛犬に、飼い主が憔悴するのも時間の問題に。
愛していたはずの愛犬なのに、飼い主によって命を奪われるという結末が待っている。
これは最悪のパターンではあるが、決して極端な話ではないと思う。
極端に体型・体重管理ができていない
あまりに太らせている
太りすぎた犬の寿命は、約3年縮まるという話がある。最近テレビなどで「究極のおデブ犬!」などと取り上げられている子は、ほとんどが異常なまでに肥満しているように思える。
去勢・避妊手術や、病気の治療の影響で、多少太ってしまうのは仕方がないこと。問題なのは、人間が過度に食べ物を与えている場合だ。
犬は人間に比べて食欲のセーブが難しく、大抵の犬は吐くまで食べることをやめない。欲しがるままにオヤツを与えたり、人間が食べる嗜好性の高い食べ物を与えていると、犬は際限なく太ってしまうのだ。
海外では、犬の健康を考慮せずに太らせ続けた飼い主が、動物虐待の罪で罰せられたというニュースまである。愛犬の体が少しむっちりする程度で、どうか調整してあげてもらいたいと思う。
栄養失調による痩せすぎ
反対に、愛犬をガリガリに痩せさせているのも問題がある。何らかの疾患(寄生虫、甲状腺機能の異常など)があって痩せている子もいるが、栄養失調で痩せこけている子も少なくない。
私がお世話になっている動物病院でも、胴回りが女性の手首ほどしかない痩せたトイプードルを診たという話を聞いてびっくりした。女性の手首って、細すぎじゃないか…。
人間の行き過ぎた痩身願望を犬にもそのまま当てはめて、食事量を極端に減らしている飼い主さんは、実は多い。太らせたくない、この可愛い犬服を着せてあげたい、などの飼い主よがりの考えで、犬を極端に痩せさせるのは危険だ。
免疫力が低下したり、ケガが治りにくくなるほか、病気を誘発しやすくなる傾向がある。
犬を必要以上に連れ回す
愛犬を愛するあまりに、どこでも一緒に行動したいと思うのは当然かも知れない。だが、犬達の体調や疲れを考慮せずに、身勝手に連れ回してはいないだろうか。
お出かけが大好きな犬でも、連日それが続くと疲労も溜まる。
もともと、犬は環境の変化がそれほど得意ではないので、変化が多すぎると過度のストレスがかかり、健康を害すことだってあるのだ。
「うちの子は慣れているから、お出かけすると喜ぶ!」と思い込まず、愛犬の表情や様子などもしっかり見てあげてもらいたい。
記念撮影しても、飼い主さんは笑顔なのに、愛犬の顔はショボーン…という写真、結構あります。
優しい虐待は、やさしくない
「虐待」と言ってしまうと言葉は悪いが、要は「人間よがり」の行動を、犬に当てはめていないだろうか、ということ。犬の「優しい虐待」について、私はそんな風に捉えています。可愛くて大切な存在だからこそ、愛犬の「本当の幸せ」について、改めて考えてみてはどうでしょうか。
昨今のペットブームで、巷であれやこれやと囃し立てられる犬達の姿を見て、そんなことを思ったのでした。
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まるまむ
初めて迎えた愛犬チワワのMaruと暮らしながら、犬の幸せについて日々考えている。
愛犬の肉球の香りが、世界で一番癒される香りらしい。
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